ゴミ屋敷で強制退去になった人のその後の現実
強制執行によって住まいを追われた人々は、その後どのような人生を歩むのでしょうか。その現実は、私たちが想像する以上に過酷なものです。強制退去という事実は、彼らを一夜にして「住宅弱者」の立場へと追いやります。まず、次の賃貸物件を借りることが極めて困難になります。賃貸契約には、ほとんどの場合、家賃保証会社の審査が必須ですが、過去に家賃滞納や強制退去の経歴があると、審査に通ることは絶望的です。大家さんのネットワークで情報が共有され、「前の物件でトラブルを起こした人」というレッテルが貼られてしまうことも少なくありません。頼れる親族や友人がいなければ、彼らの行き先は、ネットカフェやサウナ、あるいは路上ということになります。一時的に入居できるシェルターもありますが、数には限りがあり、長期的に滞在できるわけではありません。住所が定まらない「住所不定」の状態になれば、様々な困難が連鎖的に発生します。住民票が移せないため、行政からの重要な通知が届かず、国民健康保険などの公的なサービスから切り離されてしまいます。定職に就くことも、銀行口座を開設することも難しくなり、社会的なセーフティネットから完全にこぼれ落ちてしまうのです。そもそも、ゴミ屋敷を生み出す背景には、うつ病などの精神疾患や発達障害、あるいは経済的困窮や社会的孤立といった、本人だけでは解決が難しい根深い問題が潜んでいます。強制退去は、これらの根本原因を何ら解決しないまま、ただ住居という最後の砦を奪うだけの対症療法に過ぎません。住まいは、生活を再建するための基盤です。彼らを再び社会の一員として受け入れ、自立を支援するための、より踏み込んだ福祉的なアプローチが、今まさに求められているのです。