2025年9月
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隣室がゴミ屋敷で強制退去になるまでの記録
私の平穏な一人暮らしは、隣の部屋から漂ってくる異臭によって、静かに脅かされ始めました。最初は気のせいかと思いましたが、夏に近づくにつれて、その匂いは生ゴミが腐ったような、耐え難いものに変わっていきました。ベランダにはハエが飛び交い、夜中にはゴキブリが廊下を走るのを見かけるようにもなりました。私は意を決して、管理会社に何度も連絡を取りました。すると、私だけでなく、階下の住民からも水漏れの苦情が寄せられていることが分かりました。管理会社は、再三にわたって隣人に接触を試み、改善を求める手紙を投函してくれたようですが、応答は一切なかったそうです。不安な日々が続く中、ある日、アパートの掲示板に「建物明渡請求訴訟のお知らせ」といった内容の、少し物々しい貼り紙がされました。そして数ヶ月後、ついにその日がやってきました。平日の昼間、アパートの前にトラックが停まり、裁判所の執行官と名乗る人たち、そして作業員の方々が大勢現れました。隣の部屋のドアが開けられると、中から想像を絶する量のゴミが、次から次へと運び出されてきました。その光景は、衝撃的であると同時に、どこか悲しいものでした。全てのゴミが運び出され、部屋が空っぽになった時、あれほど私を悩ませていた悪臭は嘘のように消えていました。正直、心の底から安堵しました。しかし、同時に、住む場所を追われた隣人のことを考えると、複雑な気持ちにもなりました。ゴミ屋敷は、決してその部屋だけの問題ではありません。周囲の住民の生活をも脅かす、地域全体の問題なのだと、この一件で痛感させられました。